海原友明の消防団改革のすすめ

消防団を取り巻く問題の中でまずすべきことは「操法大会の廃止」です。この大会があることによって苦しんでいる全国各地の実態や私の思いを紹介します。

岐阜県議会

岐阜県議会では、令和3年に大会開催費用の問題や、今の操法大会の審査の在り方に対する問題点、県で実施した消防団アンケートの結果について質疑されました。議事を通して操法を大会にしてはいけない理由を説明します。

 

岐阜県  令和3年6月 定例会(第4回)  07月02日-04号

https://ssp.kaigiroku.net/tenant/prefgifu/SpMinuteView.html?council_id=761&schedule_id=5&minute_id=83&is_search=true

-議員-

 初めに、岐阜県消防操法大会について、二点お伺いをいたします。
 県消防操法大会は、先ほどお話をしましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、昨年に引き続き、二年連続で開催の中止が決定しております。操法大会は、消防団員の技術の継承と士気の高揚には欠かせないものがありますが、消防団員の一般的な在職期間が三年であることを考えますと、今回の二年連続の開催中止は、特に技術の継承において大きな影響を与えるものであり、大変心配をしております。
 一方で、操法大会の開催には、新型コロナウイルス感染症の終息が必要であることは言うまでもありませんが、コロナ終息の切り札として期待されているワクチン接種が徐々に進んでおり、先日決定をされた県の今後のワクチン接種の優先順位及び供給方針においては、今後実施される一般接種の優先的な接種の対象者に消防団員も含まれております。ワクチン接種が加速することで、コロナ前のような充実した操法訓練が早期に再開されるとともに、来年は操法大会が開催されることを大いに期待しております。
 さて、この県操法大会でありますが、現状は、毎年、県内五圏域を持ち回りで、さらにその圏域内の市町村が大会会場の設営を担当しているということでございます。持ち回りで行うことは開催地のPRになるなど大きなメリットがある反面、県消防協会から補助はあるといえ、広い大会会場や多くの来場者の駐車場の確保に加え、大会会場等の設営・運営など、開催地の市町村や消防団の大きな負担となっております。こうした負担が原因で県消防操法大会への参加を嫌がる消防団もあるやに聞いております。
 このような背景の下に、昨年第四回県議会定例会において、操法大会の開催地を固定することにより、開催地の負担軽減、効率的な大会開催が可能になるのではないかと提案をされました。私のところにも、会場固定化について、多くの意見や情報が届いております。会場を固定することができれば、消防団も開催市町村も負担が軽減され、毎年新たな場所で会場の配置や運営計画を策定する手間が省けるのではないか等々の意見も伺っております。また、岐阜県消防協会も固定化については前向きに考えておられるとお聞きをしております。
    -中略-
 会場の固定化は多くの都道府県で既に実施されております。多額の投資も必要なく、運営を五圏域順番で持ち回りとすれば、従来どおりの地域おこしも兼ねた消防感謝祭としての開催も可能であり、開催市町村の財政負担の軽減も図られます。このようなメリットを考慮した上、会場の固定化について、各般にわたり検討していただきたいと思います。
 また、会場の固定化と同時に、操法大会の審査の在り方の検討も必要ではないかと思います。これまで県議会で何度も取り上げられておりますが、消防団員の成り手不足は深刻な状況です。私のところへ届く声や各種機関のアンケートなどは、操法大会に向けた訓練の負担が大きいため、消防団員になりたくないといった声が多数あります
 そこで、操法大会に向けた訓練の負担について考えてみますと、負担の一つに見せる操法が過度になり過ぎていることであることではないかと思います。一つ一つの行動の美しさや統一感のあるきれいさを求め過ぎているのではないでしょうか。
 一つの事例を申し上げますと、ポンプ車操法では、指揮者の「乗車」という号令を合図に、団員五名が一斉に消防車に乗り込むところから始まります。乗り込んだ後、運転席、助手席、後部座席の四枚の扉をそれぞれ閉めることになりますが、このとき、あうんの呼吸で同時に閉めるように訓練されております。この同時に閉める動作は果たして必要でしょうか。もちろん規律は大切ですし、動きがそろえば見え方もきれいになります。チームの一体感が醸成され、結果として同時に閉まることはあるかもしれませんが、見え方を意識して、扉をシンクロして閉められるようになるまで何度も何度も訓練をしているのが現状です。これは消防操法における一連の動作のほんの一部分であります。このほかにも、多くの動作で見え方を意識した内容の訓練が繰り返されております
 そもそも消防操法に求められるのは、火災や災害発生時、その現場において適時適切な行動が取れるようにするため、実践的な動きを身につけることではないでしょうか。危険な場所で迅速、確実、安全に行動するために訓練に励むのです。ところが、操法大会においては、この迅速、確実、安全に加え、先ほどお話をしました訳の分からない美しさやきれいさが今でも求められ、まるでロボットのような動作を強いられております
 この原因については、私は、操法大会の審査の在り方にあると考えております。操法大会の審査は、隊員ごとの操法要領や行動を細かく審査する行動審査、有効放水までの所要時間を審査する計時審査、共通動作や連係動作の規律などの審査をする総合審査の三分野で審査をされます。この中で、お話ししました総合審査が諸悪の根源であります。この審査は、規律・節度、敏捷性、士気、安全性、操法要領遵守度など五項目の分類はあるものの、それ以上の審査基準はなく、各分類の審査点数は、それぞれの審査員の主観に任されるものとなっております。さらに申し上げると、そのような主観に任される内容を審査する審査員に経験の浅い人材が見られることも、私としては不満に思っております。こうした美しさ、きれいさの強要につながっているのです。
 こうした状況の中、前述したように、消防団員の確保は急務です。消防団員の成り手を確保する意味においても、操法大会の本来の目的を見詰め直し、その目的に沿った実践的な内容の基本操法になるよう検討する必要があると思います。
 そこで、危機管理部長に二点お尋ねをいたします。
 まず一点目として、県操法大会の会場固定化について、県の見解をお伺いいたします。
 また、二点目として、操法大会における操法が現場の活動に即したものとなっていないことから、県消防操法大会における審査の在り方、特に総合審査の在り方について、専門家も交え、総合的に検討し、見直しを図っていただきたいと思います。県の見解をお聞かせください。

 

-危機管理部長-

まず、県消防操法大会の会場固定化についてお答えをいたします。
 県消防操法大会の会場固定化については、大会を主催する県及び県消防協会が連携し、県消防協会内の検討委員会において議論を重ねてきたところです。
 昨年度の検討委員会においては、会場固定化により開催経費の縮減が可能である、持ち回り開催では消防団のPR効果が見込まれるという双方の意見があり、まずは会場の固定化に向け、ブロックごとに会場を決定していくことになりました。今年度はブロックごとの候補地を検討していくことになりますが、約六千人が参加する大会を円滑に運営するためには、相応の施設規模、駐車台数、県内各地からのアクセスの容易さといった要件も重要であります。
 今後、市町村や地方消防協会の御意見も伺いつつ、検討委員会において、年度内をめどにブロックごとの会場候補地を取りまとめてまいります。その際、ぎふ清流里山公園を含め、候補地を検討してまいります。
 次に、県消防操法大会における審査の在り方についてお答えいたします。
 消防操法大会は、消防団員の消防ポンプ車等の取扱いや操作の基本技術を競うものであり、その審査は全国大会に準拠し、県と県消防協会で定めた県消防操法大会審査要領によることとしております。大会に向けた各消防団における訓練では、競技者の動きを必要以上にそろえるなど、火災現場での活動に直結しない訓練が行われているとの指摘があり、その一因は、審査要領において総合審査の基準が明確に定められていないことにあると考えております
 このため、総合審査の審査項目である、規律・節度、敏捷性、安全性など項目ごとの配点、審査の着眼点、採点根拠を明確に設定するよう、検討委員会において、年度内をめどに、市町村や消防団、審査員を務める県消防学校教官、さらには国の専門家の意見を踏まえつつ、検討してまいります
 また、審査員にこうした見直し内容を含む審査要領を徹底し、適正に審査がなされるよう、審査員研修の内容を充実してまいります。

 

 今回の議題では、県消防操法大会の運営費用の問題操法大会の審査の在り方を問題視しています。操法大会を無くせば解決する問題ですが、県としては日本消防協会が全国大会を開催するとなれば、それに参加したい市町村がある限り、県側として県大会をやらない選択肢を考えることは難しいのでしょう。今後大会を廃止する地域が増えていくことで、このような考え方も変化していくものと思います。

 ちなみに県大会にどのくらいの費用が掛かるかを調べてみました。岐阜県の令和3年の県大会開催は中津川市で、2000万円を予算計上していました(コロナで中止となりましたが)。全国大会で約6000万、県大会で数千万、市大会で数百万、地区大会で数十万レベルの大会運営費が掛かるわけですから、ざっと計算しても、全国の操法大会というイベントで、合わせて十数億円くらいのお金が使われていることになります。

 そして議員さんは「見せる操法が過度になり過ぎており、その原因は共通動作や連係動作の規律などの審査をする総合審査にある。消防団員の成り手を確保する意味においても、操法大会の本来の目的を見詰め直し、その目的に沿った実践的な内容の基本操法になるよう検討する必要がある」と訴えております。

 たしかにその通りで、見せる操法の習得に多くの訓練期間が必要となっていることに、多くの消防団員は疑問を感じています。そのような実践で役に立たない無駄なものを排除した「基本操法」は、これからの消防団の訓練には必要ですが、「大会」にすることが本当に必要であるのかということも、考えて頂きたいと思います。

 大会とは競技であり、順位をつける為に審査の点数に差をつける必要があります。これからの大会では「魅せる操法」のようなパフォーマンス的要素を除外して審査がされますので、点数に差が付きにくくなっていきます。そうなっていくとどうなるかというと、差をつける為に「基本操法」をどんどん難しくしてしまうのです。

 

 基本的な事を「競技」にしてしまうと、基本がどんどん複雑になってしまい、基本が基本で無くなってしまう。そしてその「肥満化した基本」を習得するのに時間をかけなければいけなくなり、負担が増加してしまうのです。

 

 操法に大会は必要ありません。というより大会にしてはいけないのです。

 

 

もう一つ岐阜県議会で質疑された内容について書きたいと思います。

令和3年に県で行った消防団員アンケートについて、その結果をどのように受け止めているかを県知事に質問しています。

 

岐阜県  令和3年11月 定例会(第6回)  12月08日-03号

https://ssp.kaigiroku.net/tenant/prefgifu/SpMinuteView.html?council_id=801&schedule_id=4&minute_id=38&is_search=true

-議員-

   -前略-

 まさに、消防団員は地元のヒーローであってほしいのですが、各市町村では消防団員の確保に苦労しています。消防団員の成り手がなかなか見つかりません。操法大会や大会に向けた訓練が、拘束時間の長さや頻度の高さや負担となっていて、しかもその負担の大きい操法や訓練が実際の災害現場での活動に即していないことが大きな原因の一つではないでしょうか。
 こうした実態を踏まえ、団員の負担を軽減するため動き出している市町村があります。
 例えば池田町では、町の操法大会を取りやめ郡大会にも出場しない、岐阜市では、来年度から出初め式のはしご乗り披露を中止し、より実践的な訓練を取り入れるとの報道がありました。今年五月には、県において市町村と共に岐阜県消防団員アンケートが実施され、私も団運営や訓練の在り方について課題を指摘する声を少なからず聞いています。
 消防団の活動は、抜本的に見直さなければならない時期に来ていると感じています。消防団は地域防災力の中核として欠くことのできない存在であるにもかかわらず、団員の減少など団運営に課題を抱えていることから、このままでは消防団の機能を果たすことができなくなってしまいます。これまで不満があっても声を上げることができなかった消防団員一人一人の声を聞いたのですから、市町村に任せるだけではなく、前例にとらわれないで課題を指摘する声に丁寧に対応していただきたいと思います。
 そこで知事にお尋ねします。
 県は、このアンケートの結果をどのように受け止め、これからの消防団活動をより持続可能なものにしていくために、どう取り組んでいかれるのでしょうか。

 

-知事-

御指摘の消防団員アンケートは、今年度市町村と連携して実施したものであります。団員の約四分の一に当たる約五千七百人から御回答をいただいております。その結果、一般団員などの若い世代ほど消防団の必要性や満足度の評価が低く、団の運営や活動のうち、特に操法大会及び報酬や手当に改善すべき点があると認識されております。消防団活動を持続可能なものにしていくためには、こうした若い世代の意見を踏まえた団活動の負担軽減や処遇改善を団員確保の取り組みと併せて実施していくことが必要でございます。消防団そのものの設置、あるいは管理は市町村の所掌でありますが、本県としても地域の防災・減災力の確保の観点から、市町村と緊密に連携してしっかりと取り組んでまいります。
 今回のアンケート結果に照らして今後の取り組みについて申し上げますと、まず第一に、操法大会の見直しであります。県消防協会と共催している県操法大会につきましては、競技者の動きを過度にそろえるなど、大会向けの形式美を重視した訓練が団員の負担となり、火災現場で生かされないのではないかとの声があります。また、全国大会につきましても、日本消防協会においてパフォーマンス的、セレモニー的な動作を見直す方向で検討がなされております。これらを踏まえて、本県でも県消防協会の検討委員会において、年度内を目途に県大会の審査基準を見直すとともに、実践的な訓練への転換が図られるよう取り組んでまいります
 第二に、報酬や手当につきましては、その役割や責任の重要さに比べて低額となっているとの指摘がございます。今年四月には、国も消防団員の報酬等の基準を策定し、地方財政措置の拡充を打ち出してまいりました。これを踏まえて、国が示した報酬・手当額を下回っている市町村に、県として増額を働きかけてまいりました。その結果、令和四年四月には、県内三十五市町村で国から示された額を満たすこととなっております。また、他の市町でも、令和六年度までには基準額が支給される見込みということでございます。
 第三に、団員確保対策であります。本県は、団員雇用事業者に対する全国随一の減税制度、消防団加入促進事業費補助金、県内三千店舗以上で割引を行う応援制度などを実施してまいりました。その結果、消防団員の充足率は、平成二十八年度以降全国平均を上回るとともに、被雇用者団員率は八割を超えるなどの成果を得ております。来年度以降も、これらの取り組みを継続・強化してまいります。
 以上のほかに、新型コロナや災害の頻発化・激甚化などの課題への対応として、例えば県コロナ対策ガイドラインに基づく消防団の訓練を全市町村で実施しております。また、救助資機材の取扱い、避難誘導、捜索救助などを教育プログラム化し、消防学校や出前講座で実施するなど、きめ細かに対応してまいります。

 

岐阜県消防団員アンケートの結果を一部記載します。

 

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「全国消防操法大会の廃止」
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