海原友明の消防団改革のすすめ

消防団を取り巻く問題の中でまずすべきことは「操法大会の廃止」です。この大会があることによって苦しんでいる全国各地の実態や私の思いを紹介します。

操法大会はどうなる?②~消防庁の検討会の結末~

令和2年12月24日から始まった「消防団員の処遇等に関する検討会」ですが、令和3年6月30日に行われた第7回で最後となり、最終報告書が提出されました。

今回の検討会で大きくクローズアップされた「操法大会」が、最終報告としてどのような結果となったのか、整理してみたいと思います。

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まずは、最終報告書に操法大会がどの様に記載されたかを見てみましょう。

 

「消防団員の処遇等に関する検討会」最終報告書

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-86/04/houkokusyo.pdf

4.平時の消防団活動のあり方 
(1)地域の実態に即した災害現場で役立つ訓練
消防団の活動は危険と隣り合わせであることから、団員の安全確保のためには指揮命令系統の確立と規律の醸成が必要不可欠である。
訓練は、そのために必須のものであり、いわば消防団活動の基本ともいうべきものである。
特に操法は、消火活動における基礎的な動作をまとめたもので、消防団員が火災現場の最前線で安全に活動するためにも重要なものである。
一方で、近年頻発する豪雨災害などにおいては、消防団員が住民の避難誘導・支援や、逃げ遅れた方の救命ボートによる救助を実施するなど、消防団が果たす役割は多様化している。こうした活動を安全に実施するためにも、風水害や地震、豪雪等、火災以外の災害に対応する訓練の重要性がますます高まっている。
こうした状況を踏まえ、消防庁においては、消防団全体の災害対応能力の向上を図るため、平成26年に「消防学校の教育訓練の基準」を改正するとともに、救助活動に資する「救助用資機材等搭載型消防ポンプ自動車」等を各市町村に無償で貸し付ける事業等を行っている。
各市町村においても、それぞれの地域における消防団の役割を十分果たすために、より地域の実態に即した災害現場で役立つ訓練について様々な工夫が行われているところであるが、引き続き幅広い団員や地域住民などの意見を取り入れつつ、積極的な検討を行うべきである。
また、消防団にとって有効だと考えられる訓練事例等については、国からも情報提供等を行っていくべきである。
一方で、基礎的な操法の訓練に加え、地域の実態に即した多様な災害対応の訓練を充実させるためには、これまでも消防庁から通知されているとおり、団員に過重な負担がかからないよう真に必要な訓練を効率的なスケジュールで実施するなど、地域の実情に応じて創意工夫を図るべきである。


(2)操法本来の意義の徹底
Ⅱ-4(1)で述べたとおり、操法は消防団員が火災現場の最前線で安全に活動するためにも重要なものであるという意見がある一方、操法大会を前提とした訓練が大きな負担となり、幅広い住民の消防団への参加の阻害要因となっている、という指摘もある。
操法訓練の実施に当たっては、消防技術の習得といった操法本来の意義を徹底して行うことが望ましい。


(3)操法大会のあり方
消火活動の技術力の高さを競い、ひいては消防団全体の技術の向上を図るため、これまで多数の関係者の長年にわたる献身的努力により、全国、都道府県、市町村など、それぞれの段階で操法大会が運営されてきた。
操法大会については、昭和30年の国の通知において「団体的規律行動の適切と消防技術」の「一層の向上を図る」という操法大会の目的について触れられているとともに、「徒らに出場隊は、勝敗にこだわり、開催の目的に背き、物議をかもすが如きことがないように」という留意点が示されている。このような通知に則した大会運営について、関係者において努力がなされているが、近年、大会を過度に意識した訓練の実施、大会での行動の形式化という指摘がある。これらにも配意しつつ、適切な大会運営に努める必要があることから、主催者において、先に述べた通知の趣旨を踏まえた点検、随時の見直しを行っていくことが重要である。
全国消防操法大会については、主催者のひとつである(公財)日本消防協会が中心となって、具体的な操法の内容について、パフォーマンス的な動作、セレモニー的な動作については見直すという方向での検討を始めることとしている。
都道府県や市町村の操法大会については、全国大会の見直しの検討状況も踏まえつつ検討を行うべきである。例えば、検討会における事例紹介や意見のように、実際の災害に合わせた装備や内容による大会の実施や、出場隊を輪番制にすることによる毎年の訓練の負担軽減、順位をつけない発表会形式として過度な競技性を抑止するなどの手法が考えられる

 

消防庁の検討会の報告書として、操法大会について見直しをすべきであると記述されたことは、大きな前進であると思います。

 

全国消防操法大会については、日本消防協会が中心となって、具体的な操法の内容について、パフォーマンス的な動作、セレモニー的な動作については見直すという方向での検討をしていくとしています。このことついては、悪くとらえれば、具体的な期限もなく、見直しをしなくても検討さえすれば現状を維持することが可能です。

後からお話しますが、日本消防協会は操法大会をどうしても継続させたい意志がありますので、「全国消防操法大会」はこのまま何も変わらない(変えようとしない)可能性もあり、今後の世論の動きが重要なカギとなると感じます。

 

そしてもう一つ、地域(各市町村)への要望が記載されています。

地域の実態に即した多様な災害対応の訓練を充実させるためには、これまでも消防庁から通知されているとおり、団員に過重な負担がかからないよう真に必要な訓練を効率的なスケジュールで実施するなど、地域の実情に応じて創意工夫を図るべきである。

今回の報告書をきっかけに、自分たちの地域でも議論して欲しい、議論すべきだという声を上げやすい環境ができました。消防組織法からいえば、消防団は本来、各市町村が主体性を持ち運営していくものです。日本消防協会が動くことを待たずとも自分たちの地域で消防団の在り方を検討し変えていくことができます。

消防庁や、ほとんどの検討会委員の方は、操法大会は問題があると認識しているのです。操法大会をなんとかして欲しいと願う消防団員の方々は、声を上げるチャンスです!

 

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この報告会では、操法大会の問題点をしっかりと報告し議題としていたにも関わらず、検討委員の一人である日本消防協会の秋本会長は、最後までこの問題に背を向けていました。この検討会が開催された意味を理解し、今の消防団に危機感を持っているのであれば、操法大会が消防団員が減少している一要因ではないかという報告に対し、もっと真摯に受け止めるはずです。操法大会を維持することに最後まで固執する消防協会とはいったい何のために存在しているのでしょうか。

 

今回の第7回の最終検討会は、あらかじめ用意していた「最終報告書(案)」をベースに、委員の方の意見をふまえて修正を行い最終報告書を作成しました。

この最終報告書(案)と最終報告書を見比べてみると、操法大会についての記載内容が、かなりやんわりしたものになっていることがわかります。この時の議事録をみるとそれが消防協会の秋本会長の影響によるものであることがわかります。

 

「消防団員の処遇等に関する検討会」最終報告書(案)

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-86/03/shiryou2.pdf

 

変更された大きな点として、補足資料として載せられた「資料編」がすべて削除されています。ここには、今回の検討会の中で消防庁地域防災室の方が調査した操法大会についての沢山の資料がありますので、せひご覧ください。

 

そして上記で掲載した操法大会に関する記載も修正されています。たとえば報告書(案)では下記の記載があります。

操法訓練を実施するにあたっては、消防技術の習得といった操法本来の意義を改めて各消防団・分団に周知・徹底するとともに、過度に操法大会を意識した訓練を強いることについてはこれを見直し、団員個人の自由意志を尊重するなど、適正化を図るべきである。

これが、最終報告書では下記に修正されています。

操法訓練の実施に当たっては、消防技術の習得といった操法本来の意義を徹底して行うことが望ましい。

 

 

第7回の検討会の中で日本消防協会の秋本会長はこのように発言されています。

第7回議事録

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-86/03/gijiroku.pdf

特に操法に関しては、全国大会についての問題、そのことを意識した地方の大会、そして日頃の訓練といったようなことになっているんですが、本当に全国大会について問題があるとすれば、具体的に何を問題として、みんなで相談しなきゃいけないのか。
実は、操法大会につきましては、これは市原の市長さんがおられるところで言うとあれですが、千葉で、全国操法大会を去年やろう、それができなかった。今年もできなかった。来年、何とかしようと思っている。そういうようなことを、全国大会をどうやってやっていくかというようなことについては、消防庁も加わって、そして地区の、県の消防協会の会長さん方、その他いろんな方々と一緒に、どういうふうにするかということの相談をしてきているんですが、毎回、相談をしながら、こういうことでやろうということでやってきている。
ということは、今の全国大会というのは、何も主催者側で一方的に決めたというよりは、みんなで相談しながら決めてきた。しかし、問題があると言うんだったら、そういう関係の人たちとみんなで相談をしなきゃいけない。今ここで、報告の中で厳しく指摘されるというんだったら、むしろ、その前に、こういうことについて、みんなで相談しようじゃないかということがあって、その上でどうしようということでの意見が出てくるというのは、私なんかは、むしろそれが普通なんじゃないかという意識が、気持ちがやっぱり消えないんですけれども、そういうことを抜きにして、いきなり全国大会に問題ある、それから地方の大会や訓練にも影響を受けているといったことになると、ちょっとこれはどうも、何かこういう話がいきなり出てくるというのは適当かどうかというのは、私はやっぱり疑問を感じざるを得ません。むしろ、消防団の幹部の皆さん方が、日頃から本当に長年にわたって、一生懸命いろいろやってこられる、そういう方々のお気持ちというのが、今の団の運営にしましても、訓練にしましても、なかなか伝わっていないのかもしれない。そして、実態としてどうなのかという以外に、イメージということが盛んに取り上げられているんですが、そのイメージというもの、これは、例えば、若い方が、一部の方々がそういうことを思っているということだとすれば、事実はどうなのかということと別に、そのイメージを抱く過程について、もっときちんと説明をして分かっていただくというようなことというのはできなかったんだろうかとか、そういういろんなところに入りながらの議論をもっと進めていかなきゃいけないんじゃないだろうかというような気がいたします。
あんまり長くなり過ぎるとよくないと思いますので、今回はこれぐらいにしておきますが、そういう幅広い見地から、そして、消防団の現実の運営に関わってきた、御苦労なさっている方々の御意見、お気持ちということも考えながら、そして、将来に向かってのことを幅広く議論するといったような観点というのは、これはどういうものだろうかなと思ったりします。ただ、最初に説明された鈴木さんなんか、ここまでまとめるのに、大変な苦労されたに違いありませんから、その御苦労は御苦労として、御苦労さんと申し上げたいと思います。

 

それから、もう一つ、付け足しで余計なことなんですが、資料としてつけていただいているもの、これについては、もう細かくは申し上げませんが、もう一度、御検討いただいて、これが資料として必要なのかな、適切なのかなといったようなことを、もう一度見直しをしていただいたほうがいいんじゃないだろうかなという気もいたしております。どうぞよろしくお願い申し上げます

 

上記の発言を私なりに解釈すると、

全国大会は催者側で一方的に開催しているのではなく、県の消防協会や、地域から開催を要望されている。操法大会が本当に問題なら、その方たちから問題であることが声として上がってくるはず。この検討会で報告のあった若い団員からのネガティブな声は単なるイメージからくるものであり、一生懸命やってきた消防団の幹部の皆さん方の想いが伝わっていないだけのような気がする。消防団の現実の運営に関わって苦労された方々の意見や気持ちを大切にするべきだよね。まあ色々調べてくれた消防庁さんのご苦労はご苦労として認めるよ。ただし補足の資料を最終報告につけるべきかどうかは、よーく考えてからにしたほうがいいね。

となりましたが、みなさんはこの第7回の最終検討会をどのようにお感じになられたでしょうか。

 

-最後にー

令和3年8月30日の読売新聞の夕刊一面に、「この検討会の最終報告書に操法大会の過度な訓練のあり方を見直す提言がされている」という記事が掲載されました。

これは個人的見解ですが、このようなことが記事として出たのは、消防庁が権力に対する抵抗を示すために動いた結果ではないかと推測しています。

 

 

 

「消防団員の処遇等に関する検討会」の後半戦、第5回、第6回では操法大会について議論されています。下記ブログでは、操法大会について検討会の委員の皆さまがどのように考えているのかを中心にお伝えしています。

www.kaibaratomoaki.info

 

 

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