海原友明の消防団改革のすすめ

消防団を取り巻く問題の中でまずすべきことは「操法大会の廃止」です。この大会があることによって苦しんでいる全国各地の実態や私の思いを紹介します。

島根県 松江市

松江市は令和3年7月に、将来にわたる地域防災力の維持向上に向けた松江市消防団充実強化計画を策定するため検討委員会を設置しました。検討を行う上で市民及び消防団員にアンケートを実施し、団員の8割以上が「操法訓練・大会」を負担に感じており、75%の方が「操法大会の改革」が必要と考えているなどの実態が明らかになりました。

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検討委員会の資料はこちら↓

松江市:市政情報:松江市消防団充実強化計画策定検討委員会

 

令和3年7月21日 第一回検討会での市長と団長の冒頭挨拶を紹介します。

-市長-

 松江市としては、4 月 1 日の島根町加賀での大規模な住宅火災、そして先週、先々週からの記録的な豪雨による被害に対して、しっかりと教訓を踏まえて地域防災体制の強化に取り組んでいきたいと思っている。この二つの災害において、消防団の皆様には非常に献身的なご活躍をいただき、人的な被害が二つの災害とも出ていないという状態であった。これは非常に喜ばしいことであり、我々が持つ地域力の賜物だと思っている。
 一方で、被害の方に目を向けると、大規模火災については被災者の方の生活再建が道半ばというところであり、先週の大雨については、1,000 件を超える被害が報告されており、かつ、例えば美保関ではまだ道路が通行止めになっているといったところもある。今後市として、きちんと力を入れて復旧していかなければならないという認識を深めている。
 また、こういった地域防災の拠点起点となるのが消防団であり、自治会であり、公民館であり、こういった地域の核を中心として、地域の防災活動を強化していく必要があるということを今回改めて認識した。
 消防団については、例えば、団員数の減少、あるいは平均年齢が高くなっているといったような課題もあるという認識を持っているが、ここ松江の防災力ひいては地域力を高めていくために必要不可欠な存在であると考えており、消防団の充実強化に向けて忌憚のないご意見をいただきたい。市としても全力を尽くしていきたいと思っているので、何卒ご協力のほどお願いしたい。

 

-団長-

 先般、島根町加賀の火災や大雨の水防の件で、団員の皆さんには大変な活躍をいただき、地域の方々に消防団の存在価値についてさらに深いご理解をいただいたと思っている。
 本日この会においていろいろとご検討いただくが、私どもは定数 2,255 名、現在団員数が 2,004 人ということで、88.9%の充足率である。近年この率は恒常化しており、定数に近づくということは厳しい状況であると思っている。また、40 分団を 10方面団でまとめているところであり大変な組織である。また、高齢化、サラリーマン化など、なり手が少ないという状況もある。
 国でも消防団の検討がなされており、その一端を担わせていただき今回の委員会を開催する。100 年以上続いている消防団組織を、地域の財産として引き継ぎたいと考えており、皆様方のご意見をいただき、より良い消防団組織ができることを念願している。

 

 

検討会にて令和3年9月に市民と消防団にアンケートを行いました。

https://www1.city.matsue.shimane.jp/shisei/jyouhoukoukai/shingikai/nengetsu/R3/11/dai2kaimatsuesisyouboudannjyuujitukyoukakeikakusakuteikenntouiinnkai.data/5_siryou_2.pdf

アンケート結果からの「考察」として以下のように書かれています

 市民アンケートでは、消防団組織はある程度周知されているが、地元の組織を知らない割合が若年齢や市街地で多い。また、消防団に興味がない人が半数で、勧誘されれば入団を考える人が1割であった。
 これらの課題への対策としては、消防団の活動内容等の情報提供・PRを強化し、講習会・訓練等を通して地域と連携する等の意見があった。
 消防団アンケートでは、新規団員の確保が団員の負担になっており、地域(自治会、公民館等)や職場(地元事業者)との連携の強化が必要との意見が多かった。平日昼間の出動ができる体制の整備には、職場への活動の周知及びメリットの付加、組織体制(枠組み)の見直し等の意見があった。

 また、団員確保のためには、報酬・待遇の周知・改善を求める声が多かった。操法大会を負担に感じ、改革を求める意見は特に多く、早急に対応することで、団員確保につながる可能性がある。 

 

(1)市民

【課題①】消防団組織は必要と認識されているが、地元の組織や具体的な活動について、若い世代や市街地住民がよくわかっていない。

  • 8割以上が消防団の存在を知っており、必要だと思っている。<問 6、10>
  • 地元の消防団を具体的に知っているのは半数。若年齢や市街地(橋北、橋南、東出雲)で知らない割合が高い<問 7>。
  • 消防団の活動に対して、近年災害のあった島根、玉湯で、必要不可欠と考えている割合が高く、若年齢や市街地(橋北、橋南、東出雲)で必要かどうかわからない割合が高い。<問 9>

<対策>消防団の活動内容等の情報提供、PRを強化する。

  • 活動内容を SNS で発信。年配には広報誌等で。<自由記述:PR>
  • 地元消防団の役割は何か、小学生でもわかるように宣伝。<自由記述:PR>

 

【課題②】半数の人が消防団に興味がなく、入団を考える人が1割未満。

  • 消防団に多少興味がある人が3割、あまり興味がない人が5割。若い人ほど興味がない人が多い。<問 12>
  • 消防団への入団を考える人は7%、考えない人が 69%<問 13>

<対策>地域と連携し、防災に関する講習会・訓練等を実施する。

  • 防火・防災等について町内会及び町内高齢者グループに出前講習を開催する。<自由記述:講習・訓練>
  • 20 年前は消火器を使った訓練、消火栓を使った水出し訓練をやっていた<自由記述:地域との関わり>

 

(2) 消防団員
【課題①】新規団員の確保が団員に委ねられている

  • 団員・元団員による勧誘が7割。地域の慣習が2割<問 1>

<対策>地域(自治会、公民館等)や職場(地元事業者)との連携を強化する。

  • 勧誘が行いやすくなる対策として、「自治会、公民館との連携」が多い。所属別では、橋北、橋南、玉湯、宍道、東出雲で割合が高い<問 19>
  • 勧誘が行いやすくなる対策として、橋南、玉湯、鹿島、東出雲で「地元事業者への働きかけ」の割合が高い。<問 19>

 

【課題②】平日昼間の出動ができない人が半数以上

  • 「できる・ほぼできる」43%、「ほぼできない・できない」56%。島根、八雲、玉湯でできる人が多く、橋南、鹿島、美保関、八束でできない人が多い。<問 4>
  • 鹿島は会社員の割合が高く、出動が困難な可能性がある。<問 4>
  • 災害対応に対する職場の理解は島根、宍道、美保関で高く、玉湯、八束で低い。<問 3>
  • 「団員のサラリーマン化による昼間消防力の低下」を組織体制の見直しが必要な理由としているのが、橋北、八束<問 10>

<対策①>職場に活動を周知し、メリットを検討する

  • 勧誘が行いやすくなる対策として、橋南、玉湯、鹿島、東出雲で「地元事業者への働きかけ」の割合が高い。<問 19>
  • 企業・職場に活動や消防団への理解をしてほしい。協力事業所制度を徹底してほしい<自由記述:企業・職場の協力>

<対策②>地域ごとに班(分団)との統合・公民館に合わせた統合を検討

  • 消防団員の課題解決に「分団(班)の統合等枠組みの見直し」の選択が多い。<問 7>
  • 「分団(班)の統合等枠組みの見直し」が多い。橋北・橋南では、「近隣の班(分団)との統合」と「公民館に合わせた統合」が共に約4割、その他地域では、約7割が「近隣の班(分団)との統合」を理想と考えている。<問 11>


【課題③】団員の確保(団員の減少、高齢化)、活動参加者が少ない

  • 消防団の現在の課題は、「分団(班)の人数の減少」、「高齢化」、「活動時に団員が集まらない」の順に割合が高い。<問 6>
  • 団員確保について「今は確保しているが今後は難しい」、「現状もできていない」が共に4割。<問 18>

<対策①>報酬・待遇の周知・改善

  • 消防団の現在の課題解決に「報酬・待遇の改善」が最も多かった。<問 7>
  • 30 歳代以下の半数が報酬額・費用弁償金額を知らず、6割以上が改善を必要と考えている。<問 14・15>
  • 勧誘が行いやすくなる対策として、報酬等のメリット周知が最も多い。<問 17>

<対策②>地域ごとに班(分団)との統合・公民館に合わせた統合を検討《前掲》

  • 消防団員の課題解決に「分団(班)の統合等枠組みの見直し」の選択が多い。<問 7>
  • 橋北・橋南では、「近隣の班(分団)との統合」と「公民館に合わせた統合」が共に約4割、その他地域では、約7割が「近隣の班(分団)との統合」を理想と思っている。<問 11>

<対策③>自治会、公民館との連携

  • 消防団員の課題解決に「行政からの地元や地域の働きかけ」の選択が多い。<問 7>
  • 勧誘が行いやすくなる対策として、自治会、公民館との連携が多い。<問 19>

<対策④>活動回数等の見直し

  • 消防団員の課題解決に「訓練・行事等の活動回数の見直し」の選択が多い。<問 7>
  • 勧誘が行いやすくなる対策として、自治会、公民館との連携が多い。<問 19>

 

【課題④】操法大会、出初式が負担となっている。

  • 負担に感じている行事・活動は「操法訓練・大会」が8割以上、「出初式」が5割であり、八雲で「操法訓練・大会」が 93%、<問 12>

<対策>操法大会・出初式の改革

  • 改革の必要性として、「操法大会の改革」が 75%、「出初式等の行事の改革」が52%。<問 13>
  • 大会の訓練が厳しすぎるから誰も入団したいと思わない。<自由記述:操法>

アンケートでの自由記述では、操法大会・訓練に関する意見が最も多く、479 件中 91 件(19%)あり、関心の高さがうかがえます。

 

 

令和4年1月に「松江市消防団充実強化計画(案)」が策定されました。

同年3月に最終的なものとなり、その計画に基づいて令和4年度を初年度とし、10年後の令和14年度頃までを目安に対応していくようです。

https://www1.city.matsue.shimane.jp/shisei/jyouhoukoukai/shingikai/nengetsu/R3/1/dai3kaimatsuesisyouboudannjyuujitukyoukakeikakusakuteikenntouiinnkai.data/4_keikaku_ann.pdf

取り組み事項は大きく5つの項目に分類され、消防団の充実強化につなげていきます。

  1. 消防団組織の再編
  2. 消防機庫や装備等の機能強化  
  3. 団員の確保 
  4. 平時の消防団活動(行事・訓練)
  5. 処遇の改善

 

そのうちの「4.平時の消防団活動(行事・訓練)」については次のように記載されています。

●現状と課題
 特に、消防操法大会と大会に向けた訓練について、各方面団や消防団員からは、訓練の必要性は認識しているものの、多くの消防団員がサラリーマンであるという実情から、大会に向けての選手集めや大会までの訓練が負担に感じると意見をいただきました。
 そして、出初式についても日程や内容について改革を望む声が多いことが分かりました。
 また、火災や水害対応を始め、実災害時に必要となる知識や技術を得られるような訓練を望む声が多くありました。
 これらのことを踏まえ、「団員が確保ができない」という課題解決に向け、取り組んでいく必要があります。

 

●消防操法大会に向けた訓練の検討
消防操法大会に向けた訓練について、現在、国でも消防操法大会のあり方が検討されていることや、島根県においても県大会の方法について検討されています。その検討結果を踏まえ、団員が参加しやすい方法等を検討していきます。

●出初式の検討
⇒実施方法について、参加しやすい形となるよう消防本部と連携し取り組んでいきます。

●実災害を想定した訓練等
⇒水火災時や大規模災害時の活動に必要な知識と技術の習得ができる機会を消防署と連携し、取り組んでいきます。

 

松江市の今後の対応に期待しますが、10年後と言わずすぐにでも改革をおねがいしますね。

 

 

松江市消防団の情報はこちら

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http://chng.it/Kx45cBjj 
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